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>生物多様性条約とカルタヘナ議定書
はじめに 生物多様性条約とカルタヘナ議定書とは
COP10とMOP5とは
生物多様性とは
生物多様性条約(CBD)とは
カルタヘナ議定書とは
日本におけるカルタヘナ法
生物多様性条約のこれから
カルタヘナ議定書のこれから
はじめに
生物多様性条約
とカルタヘナ議定書とは
生物多様性条約
(CBD)と締約国会議(COP)
地球上には、森林や河川などの様々な自然があって、そこには多種類の生物が存在し、多様な
遺伝子
の違いによって個性が育まれています。
これらの多様性が維持されていくことを目的に掲げて、1992年、
生物多様性条約
(CBD:Convention on Biological Diversity)は、ブラジル・リオデジャネイロで開催された国連環境開発会議(地球サミット)において採択されて、翌年発効しました。
この条約は、生物多様性を単に保全・持続させるだけでなく、生物多様性の構成要素の持続可能な利用までを目的としたものです。現在は、日本を含む192ヵ国と欧州連合(EU)が本条約を締結しています。2年に1度、締約国会議(COP:Conference of the Parties)が行われ、条約の実施に関する報告、意思決定が行われています。
→詳細は
「生物多様性条約(CBD)とは」
カルタヘナ議定書と締約国会合(MOP)
生物多様性条約
は様々な構成要素からなっていますが、この条文の中で「バイテクノロジーによって改変された生物(LMO: Living Modified Organism resulting from biotechnology)で生物多様性の保全や持続可能な利用に悪影響を及ぼす可能性のあるもの」について、適切な手続きが求められています。これに基づいて「生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書」(カルタヘナ議定書、Cartagena Protocol on Biosafety)が、2003年に発効しました。
カルタヘナ議定書のための会合は、概ね2年に一度、締約国会合(The Conference of the Parties serving as the meeting of the Parties of the Protocol: COP-MOPまたはMOP)が開催されています。現在157ヵ国+EUが締約国となっています。
→詳細は
「カルタヘナ議定書とは」
※参照
http://www.cop10.go.jp
生物多様性条約
とカルタヘナ議定書の関係
生物多様性条約
(CBD)とカルタヘナ議定書は親子のような関係にあります。カナダ・モントリオールに設置されている
生物多様性条約
事務局が、カルタヘナ議定書の事務局も兼ねています。
生物多様性条約
締約国は192カ国+EU、カルタヘナ議定書締約国は157カ国+EUで、この数字が示すとおり、すべてのCBD締約国がカルタヘナ議定書の締約国になっているわけではありません。
日本では2003年11月にカルタヘナ議定書を批准しました。そして、この議定書を担保するための国内法「
遺伝子
組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(カルタヘナ法) が施行されています。
【 図:
生物多様性条約
とカルタヘナ議定書 】
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COP10とMOP5とは
生物多様性条約
とカルタヘナ議定書がそれぞれ発効して、概ね2年に一度、
生物多様性条約
締約国会議と(COP:Conference of the Parties) と、カルタヘナ議定書締約国会合(The Conference of the Parties serving as the meeting of the Parties of the Protocol: COP-MOPまたはMOP)が開催されてきました。
2010年10月名古屋で開催されたCOP10とMOP5とは、COPが10回目、MOP(正式にはCOP-MOP)は5回目という意味です。これらの会期中は、それぞれの締約国およびオブザーバーの非締約国、国際機関、NGOなどが一同に会し、各々の制度の履行・運営にかかわるさまざまな問題が議論され、多くの取り決めが採択されました。
【 図: COP10とMOP5の開催日程 】
COP10の主な議論
COP10において、中心的な議題となる2つの論点がありました。一つは、「2010年目標」の達成状況の検証と新たな目標(ポスト2010年目標)の策定、もう一つが、「
遺伝
資源へのアクセスと利益配分(ABS: Access and Benefit Sharing)」に関する国際的な枠組みの策定でした。ABSに関する国際レジームの交渉は、2003年以降継続的に実施されてきましたが、なかなか決着せず。国際レジームに関連して、その法的な拘束力をどの規定に付与するのか、対象はどの範囲にするのか、遵守のための仕組みなどが議論されてきました。これらの議論は、2010年のCBD-COP10までに一定の結論を出すことが合意され、今回で会議の交渉の期限を迎えるものの、
遺伝
資源の利用国(主に先進国)と提供国(主に途上国)の意見の隔たりを踏まえ、最終日には日本が議長案を各締約国に提示し、これが「名古屋議定書」として採択されました。 議定書の発効に向けた政府間委員会の設置や、その作業計画も決定されました。
一方、新たな目標(ポスト2010年目標)の策定については、「2020年までに生態系が強靭で基礎的なサービスを提供できるよう、生物多様性の損失を止めるために、実効的かつ緊急の行動を起こす」という趣旨の愛知ターゲット(愛知目標)が採択され、20の個別目標が合意されました。
条約新戦略計画(ポスト2010年目標該当箇所)(環境省仮訳)
http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=16471&hou_id=13104
→詳細は
「生物多様性条約のこれから」
MOP5の主な議論
カルタヘナ議定書は第27条において、「LMOの国境を越えた移動から生ずる損害についての責任と救済」の国際ルールを求めています。しかしこれまで、民事責任を求める輸入国・途上国側と、多くの解決困難な法的問題が生じるとして民事責任には否定的な輸出国・先進国側の主張が合意に至らず、なかなか妥結できませんでした。
MOP5に先立って行われた第4回共同議長フレンズ会合においてこの議論は継続して行われ、最終的に11日未明に補足議定書案が合意に至りました。また、この時に補足議定書の名称を、交渉が開始されたCOP-MOP1の開催地であるマレーシアの首都クアラルンプールと名古屋の名前を両方とって「バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書の責任及び救済についての名古屋・クアラルンプール補足議定書」とすることが決定されました。
同日開始したMOP5では引き続き議論を行われ最終日である15日、財政的保障に関する規定を含めた国際ルールを定めた補足議定書が前回一致で採択されました。MOP5はこれを最大の成果として、閉幕されました。
→詳細は
「カルタヘナ議定書のこれから」
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生物多様性とは
生物多様性条約
とカルタヘナ議定書は共に「生物多様性の保全と生物多様性構成要素の持続可能な利用」を目的に掲げています。この生物多様性とはどのような概念でしょうか。生物多様性とは、生物同士のつながり・生物の構成を表す概念で「すべての生物のあいだに違いがあること」を意味しています。
生物多様性ということば
「生物多様性 (biodiversity)」は、「生物学的多様性 (biological diversity)」を意味する造語であり、生物学者であるW.G.ローゼンによって提唱されました(1985年)。生物学者E.O.ウィルソンの著書では、「生物多様性」(1988年)が書名としても使われました。1980年代後半になると、生物多様性ということばや概念が、一般にも広まり始めました。
生物多様性という言葉からは、生物の種数が多いか少ないかといった「種の多様性」をイメージされるかもしれません。しかし、生物多様性が示す「多様性」は、生物種の種類だけではなく、
遺伝子
、種、個体群、群集、生態系、景観などのいくつかの階層レベルが存在しています。生物多様性とはそれらの各階層、あるいは階層を超えての多様性を表わす概念と考えられています。
CBDにおける生物多様性の定義
生物多様性条約
(CBD)の条文では、「生物の多様性」を「生命に表れているあらゆる多様性」と定義しており、「種の多様性」「
遺伝子
の多様性」「生態系の多様性」という3つの階層レベルでの多様性として考えられています。
多様性には以下の3つのレベルがあります。
「種の多様性」
文字通り、生物の種類における多様性を表しています。現在名前がつけられている生物種は約175万種。しかし、微生物や昆虫、菌類などでは未知の種が多く、実際には5000万種に近いとの見積もりもあります。細菌から動植物まで多様な生物が存在しています。生物多様性の保全にとって、種の多様性はもっともわかりやすいものかもしれません。
「
遺伝子
の多様性」
「種の多様性」よりも下のレベルとなり、同じ生物種にみられる
遺伝
的な変異のことを指しています。同じ種でも、それぞれの個体は
遺伝
的に異なっています。あさりの貝殻の模様に個体差があるように、異なる
遺伝子
を持つために、形や生態が多様になります。
「生態系の多様性」
生物種の間でのつながりの多様性や、生物が暮らす物理的な環境の多様性を表しています。森林、里山、湿原、干潟、湖沼、河川などの各地に様々なタイプの生態系があります。それらの生態系において、生物種は単独ではなく、食う、食われるという関係や共生関係などの生物間のつながりの中で生態系を構成しています。
生態系サービス
なぜ生物多様性は大切なのでしょうか? 生態系サービスという考え方の中に、一つの答えを見つけることができます。生態系サービスとは、人々が生態系から得ることのできる、食料、水、気候の安定などを指す概念であり、「自然の恵み」と言い換えることができます。生態系サービスにより、人間の生活の豊かさの基礎が提供されています。生態系サービスは、供給サービス、調整サービス、文化的サービス、基盤的サービスの4つのカテゴリーに分類されています。
「供給サービス」
生態系で生産される食糧や木材といった生活必需品などを供給する機能を指します。
「調整サービス」
生態系により環境の変化が緩和されることを指します。地球温暖化などの気候変動や集中豪雨などの急激な変化に対して、緩衝的な働きがあり、環境の安定化をもたらします。
「文化的サービス」
ハイキングやダイビングなどのように、生態系が文化的な側面から生活に豊かさを与えている機能を指しています。
「基盤的サービス」
生態系サービスの土台を築くもので、他の3つの生態系サービスが成り立つための環境を形成するような機能を指しています。
38億年にもおよぶ生命進化の産物である生物多様性は、さまざまな生態系サービスの源泉となっているのです。
生物多様性と
生物多様性条約
以上のように自然界の異なるレベルにおいて生物多様性があること、それによって様々な恩恵が人類にもたらされていることがわかります。こうした生物多様性がバランスのとれた状態で維持されていくことが重要である、という考え方が
生物多様性条約
とカルタヘナ議定書の背景にあります。
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生物多様性条約
(CBD)とは
生物多様性条約
の目的
生物多様性条約
の目的は、以下の3つです。
「生物多様性の保全」
国立公園などの保護地域の指定・管理といった、生物を生息地の中で保全すること、および動物園や植物園など本来の生息地以外での飼育・栽培により保全すること、環境影響評価の実施などが規定されています。
「生物多様性の構成要素の持続可能な利用」
各国での生物多様性の持続可能な利用を保護することが規定されています。人間は生物を自然の恵みとして利用していますが、その自然の資源を利用する際に使い尽くしてしまうのではなく、子孫の世代での利用も確保する狙いがあります。このような持続可能な利用には、保全と利用のバランスを考えることが重要となります。
「
遺伝
資源の利用から生じる利益の公正かつ衡平な分配」
遺伝
資源を保有する国の主権を認めること、
遺伝
資源を利用して得た利益を資源提供国と資源利用国が公正に配分すること、途上国への技術移転を公正で最も有利な条件で実施することが規定されています。つまり、発展途上国の利益に配慮し、生物資源を利用することによって得られる利益をバイオテクノロジーに利用した国だけでなく、原産国にも公平に配分することを意味しています。ここでの「利益」には、金銭のみでなく、知識や技術移転なども含まれています。
以上のように注目される点は、生物多様性の保全だけでなく、生物多様性を利用することもうたっているところです。上記3にあるように、ここでは利益の配分、バイオテクノロジーの取り扱い、知的財産権などの利用も規定しています。
これは起草過程において「国の経済的発展の権利を阻害されるべきではない」とする発展途上国の主張が受け入れられた結果です。いい方をかえれば、単純に自然保護を定めた条約でなく、経済の側面からも生物多様性にアプローチしようとする条約といえます。
CBDの特徴
CBDの特徴は、それが気候変動枠組み条約等と同様に枠組条約(framework convention)であることです。その条文の中で、基本原理を示して条約の目的や一般的な義務などを規定していますが、詳細は議定書などで決められる仕組みとなっています。
この仕組みの中心となっているのが、定期的に開催される締約国会議(COP)で、全体の方向性や条約の実施方法などについての議論が行われています。たとえば2002年に開催されたCOP6では、「生物多様性の損失の速度を2010年までに顕著に減少させる」とする「2010年目標」が採択されました。これまでにも、外来種に対する中間原則指針やエコシステムアプローチ十二の原則に関する合意、カルタヘナ議定書の採択など、多くの成果があがっています。また、本条約には「自国内の
遺伝
資源に対する国の主権的権利」が定められており「
遺伝
資源へのアクセスと公平かつ衡平な利益配分(ABS)」に関する議定書を策定することを目指した交渉が行われており、これはCOP10の大きな論点にもなっていました。COP10最終日まで続いた議論の結果、
遺伝
資源の利用に対し利益配分を行い、利益配分を遡って対照とする「遡及」は削除する、といった「名古屋議定書」が採択されました。
これらを受けて各国の具体的な実施内容は、国内法や行政、政策などに委ねられます。CBDでは、各締約国が取り組む活動の範囲において、各国が国家戦略として取りまとめることが明記されています。
日本における取り組み
CBDの締約国として、日本も生物多様性国家戦略を策定しています。1995年に、CBDに対応する形で初めての「生物多様性国家戦略」が策定されました。続いて、2002年には「新・生物多様性国家戦略」が策定され、2007年には、第三次生物多様性国家戦略が策定されています。
そして、2008年6月に「生物多様性基本法」が公布・施行されました。2010年には、生物多様性基本法に基づく初めての生物多様性国家戦略となる「生物多様性国家戦略2010」が閣議決定されています。
【 図: 生物多様性締約国会議(COP)の歴史 】
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カルタヘナ議定書とは
カルタヘナ議定書の目的
生物多様性条約
第19条3項において「バイオテクノロジーによって改変された生物 (LMO: Living Modified Organism resulting from biotechnology)であって生物多様性の保全および持続可能な利用に悪影響を及ぼす可能性のあるもの」について、「安全な移送、取り扱いおよび利用の分野における適当な手続き」を定める議定書の必要性を検討することを求めています。LMOを巡る問題は国内だけでは解決が難しく、途上国を含む国際的な問題と関連していることから、議定書での取り組みが必要となります。
これに基づき2000年1月に、特別締約国会議(Extraordinary Meeting of the Conference of the Parties: ExCOP)再開会合において、「生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書」(カルタヘナ議定書、Cartagena Protocol on Biosafety)が採択されました。
カルタヘナ議定書は、
遺伝子
組み換え技術等の「現代のバイオテクノロジーによって改変された生物LMO(Living Modified Organism*)の国境を越えた移動に焦点を絞って規制の枠組みを定めています。ここでは、生物多様性の保全と持続可能な利用に悪影響を及ぼす可能性のあるLMOの安全な移送、取り扱いおよび利用について、取り扱いおよび利用に対する保護が十分な水準で確保されることを目的として、輸出入時の手続きや利用などで講じるべき措置についての国際的な枠組みを定めています。LMOの潜在リスクに対処するための国際協定、それがカルタヘナ議定書なのです。
※ LMOとGMO:カルタヘナ議定書の規制対象である
遺伝子
組み換え生物(LMO: Living Modified Organism)はカルタヘナ議定書第3条g項において「現代のバイオテクノロジーの利用によって得られる
遺伝
素材の新たな組み合わせを持つ生物」であると定義されています。日常的に広く用いられているGMO( Genetically Modified Organism)という文言ではないのは、GMOの定義のあいまいさに照らして、もっと明確な定義づけが必要であると考えられたためです。実際にはカルタヘナ議定書採択後、非公式の場では、LMOとGMOが類似語として用いられていることが少なくありません。ただし、LMOは「生物」である、「生きていること」が条件になります。たとえば
遺伝子
組み換えダイズはLMOですが、
遺伝子
組み換えダイズを用いた醤油はLMOには該当しません。
カルタヘナ議定書の内容
カルタヘナ議定書の規制対象となるLMOは次の3つに分類されます。
意図的に環境へ導入するLMO(例:農地栽培用の
遺伝子
組み換え種苗)
食料、飼料用、加工用にするLMO(例:
遺伝子
組み換え植物(食用、飼料用、加工用))
封じ込めて利用するLMO(例:工場等閉鎖的環境のみで使用される
遺伝子
組み換え微生物)
この分類にしたがって、それぞれ表のとおり異なる手続きが適用されます。なお、人間用の医薬品でほかの国際協定や国際機関が取り扱っているLMOについては、本議定書の対照から除外されています。
【 表: カルタヘナ議定書に基づく
遺伝子
組み換え生物の輸出入手続きおよび添付書類 】
※BCH:締約国による議定書の運営を支援し、LMOに関する情報の交換や共有を行うためのメカニズム。情報はウェブ上で公開されています。わが国はカルタヘナ法により日本版BCHを設立しています。(
http://www.bch.biodic.go.jp/
)
事前同意手続き(AIA)
上記の表の中に出てくるLMOの輸出入の際の事前同意手続き(AIA)とは、カルタヘナ議定書第7条から10条に規定されており、同議定書の中
核
を担うものです。
AIA手続きは、もっとも自然界に近接した場で使用される「①環境放出利用のLMO」に対して適用されます。それによると、輸出国または輸出者は、LMO輸出の意思をLMOの情報とともに、輸入国に対して文書で通知しなければなりません。輸入国はリスク評価を行い、その結果をもとに輸入の可否を判断し、輸出国あるいは輸出者およびバイオテーフティクリアリングハウス(BCH)に回答します。この輸入手続きを経て、輸入国が認めたLMOについてのみ、輸出入が行われることになります。ただし、過去に輸出を行い、上記手続きをすでに経ているLMOについては、手続きを省略することができます(図1)。
また、「②食料、飼料、加工用として利用されるLMO」については、AIA手続きは義務付けられていませんが、自国における②の利用を決定した国には、BCHに通告することが求められています。輸入国はBCHを通じて情報を入手し国内基準に従って輸入を決定することができます(図2)。
「③輸入国の基準にしたがって封じ込め利用が行われているLMO」に対しては、カルタヘナ議定書の輸出入前の手続きに関する規定は適用されません(国内法で定めることはできます)。
【 図:「①環境放出利用のLMO」に対して適用される事前同意手続き 】
【 図:「②食料、飼料、加工用として利用されるLMO」に対して提供される手続き 】
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日本におけるカルタヘナ法
(
遺伝子
組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律)
カルタヘナ法の施行
カルタヘナ議定書の批准に伴い、日本の国内法として2003年6月に制定され、2004年2月から施行されているのが、「
遺伝子
組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(カルタヘナ法)です。
カルタヘナ法では、
遺伝子
組み換え植物の拡散を防止するための措置、未承認の
遺伝子
組み換え生物などの輸入の有無を検査する仕組み、輸出の際の相手国への情報提供、違反者への回収や使用中止の命令などが定められています。
カルタヘナ法について
カルタヘナ法では、LMO(
遺伝子
組換え生物等)の取り扱いに関して2つに分類しています。
「第一種等使用」
野外で使用する場合の規定です。LMOの
ほ場
での栽培や穀物としての流通などを対象として、一般環境中で使用する場合の規定であり、事前に主務大臣の確認を受けた上で使用することが義務付けられています(事前承認手続き)。
「第二種等使用」
実験室内での実験を行うような、研究や産業などを対象として、環境中への拡散を防止が課せられています。省令に定められた拡散防止措置を行うか、主務大臣の確認を受けたうえで拡散防止措置をとることが定められています。
わが国におけるカルタヘナ法に基づく手続きは、「輸入される食品、飼料、加工用のLMO」も第一種使用に含めて承認手続きの対象としている点で、カルタヘナ議定書よりも厳格な適用となっています。また、未承認のLMO等の輸入の有無を検査する仕組み、輸出の際の相手国への情報提供、違反者への回収や使用中止の命令などが定められて、厳密な管理が行われています。
カルタヘナ法の評価のポイント
カルタヘナ法の生物多様性影響評価では、LMO自体の特性に加え、野生生物への影響評価に力点が置かれており、(1) 生態系における競合の優位性による評価、(2) 有害物質の産生による影響、(3) 近縁野生種との
交雑
による影響についての検討が加えられます。
具体的には、申請される
遺伝子
組み換え作物の宿主や
遺伝子
導入する形質、使用目的に応じた評価項目などが設定されます。この評価では、例えば、国内で昔から利用されてきた作物を宿主とした
遺伝子
組み換え作物などの場合には、宿主作物と比較して、LMOの性質が野生動植物などに影響を与えるようになっていないかが評価のポイントとなります。
カルタヘナ法の運用
国内のカルタヘナ法の策定には、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、環境省がかかわっています。
遺伝子
組み換え植物の試験栽培に設けられた基準は、世界でもっとも厳密な基準の一つとなっており、安全性の高さが保証されています。
カルタヘナ議定書の施行にあたっては、その国の実情に合わせて弾力的に取り決めることができるようになっています。日本でも、カルタヘナ法施行から5年ほどが経過しました。徐々に評価の実績が蓄積されてきたことなどから、田畑を含めた開放系の環境などでの使用を規定する「第一種使用」の関連する部分では、規制の緩和も検討され始めています。
各国の運用については、対象とする課題の科学的な背景や社会経済の事情、あるいは異なる地理および環境での状況などの多面的な側面から、状況に応じて柔軟に対応する必要があります。たとえば、トマトの原産地は中南米であり、北アフリカや日本には近縁野生種は存在せず、
交雑
の心配はないと推測されます。一方で、ダイズの場合には、日本にはツルマメなど近縁種が存在しており、
交雑
の可能性を検討する必要が生じてきます。このように、トマトとダイズでは、評価の上で着目すべきポイントは異なっていると考えられます。また、ライフサイクルの長い樹木と一年生の農作物とでは、評価の期間や手法は異なるものでなければなりません。さらに、同一国内であったとしても、地域により、気候や環境が異なりますので、柔軟な対応が必要とされるのです。
カルタヘナ法における承認作物
日本において、すでにカルタヘナ法での承認をうけた作物などの件数は、150件ほどになっています。例えば、これらの件数は、青いバラやセイヨウナタネ、イネなどが対象ですが、導入する形質が異なれば、それぞれを1件としてカウントしているものです。なお、承認期間を過ぎているものも件数として含んでいます。
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生物多様性条約
のこれから
2010年10月18日から29日まで、名古屋において開催されるCOP10において、中心的な議題となる2つの課題がありました。一つは、「2010年目標」の達成状況の検証と新たな目標(ポスト2010年目標)の策定、もう一つが、「
遺伝
資源へのアクセスと利益配分」に関する国際的な枠組みの策定でした。
2010年目標が採択された経緯と達成状況
「2010年目標」とは、CBD締約国が目標として定めていた「2010年までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させる」というものです。この「2010年目標」は、2002年にハーグで開催されたCBD-COP6で採択されたものであり、
生物多様性条約
戦略計画の中に明記されています。内容は、「構成要素の生物多様性の保護」「持続可能な利用の振興」「生物多様性に対する脅威への取組」「人類の福祉の確保のための生物多様性由来の産物とサービスの維持」「伝統的知識、発明及び慣行の保護」「
遺伝子
資源の利用による利益の平等で衡平な利益の共有の確保」「資源移転の状況」という7つの目標分野で21の個別目標が設定されました。
CBD事務局は、2010年5月に報告書を公表し、「2010年目標」の達成状況を評価しています。それによれば、「2010年目標」は21の個別目標のいずれについても地球規模で達成されたものはなかったと結論づけています。「重要な地域の保護」のようにある程度は達成された項目もありましたが、ほとんど前進のみられなかった項目もあります。
2010年目標の達成は困難となりましたが、目標達成に向けた各国の取り組みにより、締約国において生物多様性国家戦略や行動計画が策定されました。保護地域の拡大や外来種問題への対応なども進んでいます。
次なる「ポスト2010年目標」
CBD-COP10では、「ポスト2010年目標」と呼ばれている、2010年以降 の次期目標の設定が大きな議論になりました。CBD事務局では、2020年を次期目標年とする原案を条約加盟国に提示し、「新戦略計画(2011-2020年)」は、名古屋での採択が期待されていましたが、議論の結果、保護地域を陸域17%、海域10%とするといった20の個別項目などを内容とする「愛知ターゲット(愛知目標)」が採択されました。
条約新戦略計画(ポスト2010年目標該当箇所)(環境省仮訳)
http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=16471&hou_id=13104
【参考】ポスト2010年目標に関する日本政府案の概略は、次のように中長期の目標と短期の目標が設けていました。
(1)中長期の目標(2050年)
人と自然の共生を世界中で広く実現させ、生物多様性の損失を止め、その状態を現状以上に豊か なものとするとともに、人類が享受する生態系サービスの恩恵を持続的に拡大させていく。
(2)短期の目標(2020年)
中長期目標を達成するため、
生物多様性の状態を科学的知見に基づき地球規模で分析・把握する。生態系サービスの恩恵に対する理解を社会に浸透させる。
生物多様性の保全に向けた活動の拡大を図る。将来世代にわたる持続可能な利用の具体策を広く普及させる。人間活動の生物多様性への悪影響を減少させる手法を構築する。
生物多様性の主流化を図り、多様な主体が新たな活動を実践する。
また、中長期および短期の目標達成に向けた個別の目標が9つ設定されています。
生物種を保全する活動を拡充し、生態系が保全される面積を拡大する。
生物資源を用いる農林水産業などの活動において、持続可能な方法による生産の比率を高める。
生物多様性への脅威に対する対策を速やかに講じる。
生態系サービスの恩恵を享受するための仕組を整備し、人類の福利向上への貢献を図る。
地球規模で、生物多様性及び生態系サービスの状態を的確に把握し、その結果を科学的知見 に基づき分析評価するとともに、それに対する認識を広め、理解を促進する。
開発事業、貧困対策と生態系の保全を調和させるための手法を普及・確立させる。
伝統的知識の保護とABS(
遺伝
資源へのアクセスと利益配分)の取組を促進するための体制を整備する。
生物多様性の保全と持続可能な利用を達成するための資金的、人的、科学的、技術的な能力を向上させる。
生物多様性の保全と持続可能な利用に対する多様な主体の参加を促進する。
ABSについて
COP10で注目が集まるもうひとつの議題が、「
遺伝
資源へのアクセスと利益配分(ABS: Access and Benefit Sharing)」に関する国際的な枠組みについてです。ABSとは、途上国などが保有する
遺伝
資源などを利用した際には、その利益の一部が
遺伝
資源を提供した側に配分されることを定めたものです。ここでの利益には、製品の売上による金銭的な利益だけでなく、情報や特許、能力開発、教育などの様々な便益に相当するものが含まれます。
CBDでは、
遺伝
資源に対する財産権の設定は、各国の法制度に従うとされています。このため、
遺伝
資源の豊富な途上国を中心として、ABSに関する国内法制度が整えられつつあります。しかし、ABSに関連する各国の法制度は、国ごとにばらつくことが懸念されてきました。
そこで、2002年オランダ・ハーグでのCBD-COP6において「
遺伝
資源アクセスと利益配分に関するボンガイドライン(通称「ボンガイドライン」)が採択されました。ところが、ボンガイドラインはABS手続きの大枠を定めるに過ぎないために、利益の確実な配分を求める途上国からの不満が高まっていました。このような経緯から、法的に拘束力のある国際レジームの議論が開始されることになりました。
COP10までにABSに関する国際レジーム策定交渉を完了すべし、とのCOP8決定に基づき、COP10開催中に、非公式協議会合において検討が行われましたが、国ごとの意見対立が続いたことを踏まえ、最終日に日本が議長案を提示、同案が「名古屋議定書」として採択されました。
ABSに関する名古屋議定書(骨子)
http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=16472&hou_id=13104
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カルタヘナ議定書のこれから
これまでのMOP
生物多様性条約
の締約国会議(COP)が、カルタヘナ議定書の締約国会合(meeting of the Parties: MOP)としての役割を兼ねるとされているため、カルタヘナ議定書の締約国会合は 正式にはCOP/MOP と表記されます。カルタヘナ議定書の会合である COP/MOP が1週間ほど、
生物多様性条約
の全体会合である COP が2週間ほど行われます。
カルタヘナ議定書の「責任と救済」
カルタヘナ議定書は、第27条において「LMOの国境を越えた移動から生ずる損害についての責任と救済 (Liability and Redress) 」の国際ルール作成のプロセスを設けることについて定めています。つまり、輸入されたLMOによって悪影響が生じた際に、生物多様性の損害の判断基準、責任のあり方、救済の方法などについて、国際的なルールや手続きを定めようというものです。
この「責任と救済」は何を意味するのか。条文の第27 条には、次のように書かれています。「この議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議は、その第1回会合において、改変された生物の国境を越える移動から生ずる損害についての責任及び救済の分野における国際的な規則及び手続を適宜作成することに関する方法を、これらの事項につき国際法の分野において進められている作業を分析し及び十分に考慮しつつ採択し、並びにそのような方法に基づく作業を4年以内に完了するよう努める」 と記載されています。このように、「責任と救済」については、枠組としては決まっているものの、その詳細はずっと未定のままでした。
MOP5において「名古屋・クアラルンプール補足議定書」が採択
「責任と救済」の詳細な内容については、議定書策定時から調整が難航してきましたが、MOP5において各国がようやく合意に至り「バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書の責任及び救済についての名古屋・クアラルンプール補足議定書」として採択されました。
補足議定書でこれまで議論の中心になっていたのは、財政的保障と産品に関する二つの規定についての条項です。このうち、財政的保障については、将来的にLMOが繁殖して、在来種を駆逐するといった生物多様性に大きな損害を与えた場合を想定して、輸入国が原因者を特定して、現状回帰や補償を求めることができるとした内容で合意されました。
また、産品について補足議定書の対象となるLMOは、加工食品や調味料、油など手を加えたものは含まず、LMOそのものに限定しされました。
このように名古屋・クアラルンプール補足議定書が採択されたことによって、「もしもの時」の備えが強化されることになりました。
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