遺伝子組み換え技術は、未来の農業産業に役立ちます。

01. 現在、どのような遺伝子組み換え農作物が、どのような用途で利用されていますか?

現在、世界で栽培されている遺伝子組み換え作物には、大豆、トウモロコシ、ワタ、ナタネなどがあります。これらは食品だけではなく、飼料や工業原料としても広く利用されていて、私たちの生活に欠かせないものとなっています。食用油や飼料は、遺伝子組み換え作物を原材料として作られているものが大半を占めています。
現在、世界で栽培されている遺伝子組み換え作物には、大豆、トウモロコシ、ワタ、ナタネの他に、少量のスクワッシュ、パパイヤ、アルファルファ、テンサイなどがあります。
日本で現在、食品としての利用が認められている遺伝子組み換え作物は7作物あり、そのうち実際に流通しているのは大豆、トウモロコシ、ワタおよびナタネです。
大豆
世界中で栽培されている大豆のうち72%は遺伝子組み換え品種です(2008年)。
日本において、遺伝子組み換え大豆は主に大豆油の原料として海外から輸入され、大豆油は様々な加工食品にも用いられています。油を搾った後に残る脱脂大豆は飼料としても使用されます 。
ワタ
世界で栽培されているワタのうち47%が遺伝子組み換え品種で(2008年)、綿花は繊維として衣料などに用いられます。また、綿実からは良質の油が搾られ、綿実油は食品に、搾り粕は飼料として使用されます。
ナタネ
世界で栽培されているナタネの21%が遺伝子組み換え品種で(2008年)、ナタネの種子を搾ったナタネ(キャノーラ)油は食用に、ナタネ油粕は飼料や肥料に使用されます。
ナタネ油は現在、日本で最もよく使われている食用植物油脂で、総供給量のおよそ1/3を占めます 。
トウモロコシ
世界で栽培されているトウモロコシのうち23%は遺伝子組み換え品種です(2008年)。
日本で消費されるトウモロコシのほぼ全量は、海外から輸入されていて、日本は世界第1位のトウモロコシ輸入国です。トウモロコシはとても重要な穀物の一つで、国内にある全ての畑(水田を除き、一般畑と樹園地と牧草地の合計)で栽培する量に匹敵するトウモロコシが使われています。
最も多い用途は飼料で、ニワトリや豚や牛などの肥育に用いられています。
食用としては、油が搾られたり、トウモロコシのデンプンを分解して、スターチや液糖などが作られます。
さらに近年は、トウモロコシからエタノールを製造して、ガソリンなどの代替燃料として利用されるようになり、需要が急速に伸びています。
遺伝子組み換え作物が商品化されて既に10年以上が経過して、いまや私たちの暮らしを支える重要な資源となっています。その用途は食品や飼料のみならず、今後は燃料など、より多面的になるとみられています。

02. 植物から作るバイオ燃料、バイオエタノールとは何ですか?

バイオエタノールとは、トウモロコシなどの生物資源(バイオマス)から作られる再生可能燃料のことで、地球温暖化防止対策や、石油代替燃料として注目されています。年々高まるバイオエタノールの需要にこたえるために、遺伝子組み換え技術の貢献が期待されている分野でもあります。
バイオ燃料は今後注目のエネルギー
バイオエタノールとは植物からつくられるエタノールのことで、主にトウモロコシやサトウキビに含まれる糖を発酵させて作られます。バイオエタノールは再生可能燃料ともいわれ、石油などの化石資源由来燃料の代替燃料として脚光を浴びています。バイオエタノールを燃やすと、ガソリンと同様に二酸化炭素(CO2)が発生しますが、これは植物が成長中に吸収したCO2の再放出であり、大気中のCO2は増加しないので温室効果ガスとは見なされません。つまり、バイオエタノールを導入することで地球温暖化防止の対策になり、またガソリンの消費量を減らすため原油高の緩和効果など、経済効果も期待できます。現在、バイオエタノールを自動車用燃料として利用する取り組みは、ブラジルと米国を筆頭に世界各国で進められています。
トウモロコシなどの生物資源を有効利用
米国のエタノール生産では主に、トウモロコシが原料として使われており、2008年には米国のトウモロコシの34%がエタノール製造に用いられました。今後ますますバイオエタノールの需要は拡大するとみられているため、食品や飼料として利用するためのトウモロコシが減ってしまい、それによって食糧不足や価格の高騰を招くのではないかといった懸念を聞くこともあります。
この疑問に応える手段のひとつとして期待されているのが、遺伝子組み換え技術などのバイオテクノロジーです。米国のトウモロコシ生産量は、2004年に過去最高のヘクタールあたり約10.1トンを記録し、2015年までには8%の増加が予測されていますが、今後の新たな遺伝子組み換え品種の開発によって、その増加率はさらに高まるとみられています。
また、トウモロコシの繊維部分からエタノールを製造する新たな加工技術の開発によって、生産効率は大幅に向上しました。これまで農業廃棄物となっていたトウモロコシの芯などからエタノールを作り、トウモロコシの実は従来どおり食料や飼料として利用するなど、一層の効率化を目指して研究がすすめられています 。
遺伝子組み換え技術を活用してバイオエタノールをより効率的に生産
遺伝子組み換え技術は、上記のように生産量を増大させて安定供給を可能とするだけでなく、より効率的にバイオエタノールを生産できるような原料作物を開発することも可能にします。たとえば、トウモロコシからエタノールを製造する際には、デンプンを糖に分解する酵素を加えますが、この酵素をつくる遺伝子をトウモロコシに組み込めば、トウモロコシ自身に酵素を作らせることができます。現在は微生物につくらせた酵素が利用されているため、それを抽出・精製しなければなりませんが、組み換え技術が活用されれば、その手間やコストを省くことが可能になります。このトウモロコシの開発は、既に成功しており、実用化を目指したさらなる研究が進められています。
トウモロコシの用途は飼料用、食用、加工用と多岐にわたりますが、遺伝子組み換えなどのバイオテクノロジーの活用が、新たな燃料の開発や循環型社会の形成にもつながっていくことが期待されています。農業の果たす役割は、食料の生産にのみならず、今後はより多面的なものとなるでしょう 。

03. 世界で遺伝子組み換え作物を栽培する農家が増えているのはなぜですか?

農家にとって大敵である「雑草」「害虫」「作物の病気」に対して、効果的な新品種が、遺伝子組み換え技術によって開発されているためです。これらの品種の栽培メリットによって、大規模農家だけでなく、小規模農家からも支持され、2008年の調査によれば、遺伝子組み換え作物を栽培する農家1330万人のうち9割は発展途上国の小規模農家です。
従来品種では難しかった問題を遺伝子組み換え技術が解決
「雑草」「害虫」「植物ウィルスによる病気」に対して効果的な新品種が、遺伝子組み換え技術によって開発されています。
除草剤耐性(除草の影響を受けない)品種】除草剤の影響を受けないため、効果的に除草でき、除草のためにかかる手間やコストを減らすことができます 。
基本情報>GMの安全性(除草剤の影響を受けない作物)

害虫抵抗性(害虫に強い)品種】害虫による被害が減って、安定した収穫が得られます。
基本情報>GMの安全性(害虫に強い作物)

【植物ウィルスに強い品種】作物のウィルス病がひとたび蔓延すれば、その作物は壊滅的な被害を受け、期待された収穫をほとんど得られないことがあります。ハワイのパパイヤ農園では、ウィルス病によって壊滅的な被害を受けましたが、遺伝子組み換えによる品種改良によって、ウィルス病に強い品種が開発されたおかげで、もとの収穫高を確保できるようになりました。これは、従来の品種改良では成しえなかったことでした。
基本情報>GMの安全性(植物のウィルス病にかかりにくい作物)
遺伝子組み換え作物の栽培農家は世界で1000万人を突破
遺伝子組み換え作物の商業栽培がはじまったのは1996年で、当時の栽培面積は6カ国で合計170万ヘクタールでした。その後、年を追うごとに栽培農家が増え、2008年は1億2500万ヘクタール、25カ国で、1330万人の農家が遺伝子組み換え作物を栽培するようになっています。
栽培面積の詳細
さまざまな農家が組み換え作物の栽培を支持しています
遺伝子組み換え作物は大規模農家によって栽培されているようなイメージが強いかもしれませんが、実際には遺伝子組み換え作物を栽培している農家の9割が発展途上国の小規模農家です。小規模農家にとっては、遺伝子組み換え品種を栽培して生産性を上げるほうが、大型機器などを導入するより手軽なため、恩恵を得やすいのです。
さまざまな品種の種子が販売されている中で、どの品種を栽培するのか、選択するのは農家自身です。栽培した結果、期待していた収穫が得られなければ、翌年はもう、その品種を栽培したいとは思わないでしょう。遺伝子組み換え品種を選んで栽培する農家が、これだけ増えているということは、「育てやすかったから来年もまた栽培してみよう」など、農家自身がメリットを実感していることの現れといえます。