長期にわたって行う動物実験は本来、生物の体内に蓄積するような化学物質を一生涯にわたって投与した場合、どのような毒性が、どの程度の濃度で発現するのか調べ、摂取してもよい量を決めるために行われるものです。
遺伝子組み換え技術によって新たに作られる
タンパク質は、胃腸で消化されるなどして、重金属のように体内に蓄積しないことが確認されています。そのため、動物実験の本来の目的にはそぐわないという面もあって、必須項目となっていないのです。しかし消費者の方々の不安に応えるためということもあり、念のため、開発企業が動物実験を行うこともあります。数多くの動物実験が行われていますが、安全性について問題があったという実験データはありません。
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一方、遺伝子組み換えによって新たに作られる成分はタンパク質です。このタンパク質がきちんと消化されて、体内に蓄積されないことがわかれば、長期毒性試験が行う意味もあまりなくなってきます。このため厚生労働省の安全性審査では、これらの動物試験については、安全性について明確に証明するデータがないなどの場合だけ、行うことにしているのです。
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ちなみに、これまで食品としての安全性が確認された遺伝子組み換え食品は、既知のアレルゲンや有害物質が増えていないことが確認されているので、長期の毒性試験が必要とされたものはありません。 しかし、実際には開発企業が自主的に急性毒性の試験を行っている例もありますし、消費者の不安の声に応えて、念のために長期動物実験も行っている研究もあります。食品安全委員会でも遺伝子組み換え農作物を飼料として家畜に与えた場合、健康状態や、肉や乳、卵にも影響がないことを確認しています。
(http://www.fsc.go.jp/senmon/idensi/gm_siryoukijyun.pdf)
また、欧州食品安全機関は、遺伝子組み換え飼料を与えられた家畜の乳、肉、卵に関する文献の調査を行い、摂取したDNAやタンパク質は家畜の体内で素早く分解され、健康状態や乳などにも影響がないことを確認しています。
(http://www.s.affrc.go.jp/docs/anzenka/html/colum9/category_a/topics_080311b.pdf)
(http://www.s.affrc.go.jp/docs/anzenka/html/colum9/category_a/topics_080311b.htm)
開発企業は、
遺伝子組み換え農作物が、従来の作物よりアレルギー誘発性が高まることがないよう、特に万全を期して確認試験を行います。アレルギーを引き起こす可能性が極めて低いことを確認して、はじめて市場に流通することが許されるのです。
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食物アレルギーは、食物に含まれるある種の成分に対する免疫反応によって起こる過敏症で、ひどい場合には全身ショック症状を引き起こすアナフィラキシーなどが知られていて、重篤な場合には死に至ることがあります。これらの原因となるアレルゲンは、人によって異なりますが、小麦、そば、落花生、牛乳、卵などに含まれることが知られています。食物アレルギーは、アレルゲンとなる成分が微量でも発作が引き起こされてしまうため、患者さんにとっては深刻な問題です。このため開発企業は、遺伝子組み換え食品が遺伝子を組み換えることによって、アレルゲンとなる物質を新たに生み出したり、従来から含まれているアレルゲンの含有量を高めるようなことがあっては決してならない、と考えます。
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科学の進歩によって食物アレルギーの仕組みも次第にわかるようになり、どのような成分が原因物質になるのか、明らかになってきているため、現在わかっている科学的知見を総動員して、確認を行っています。遺伝子組み換えによって新たにできるタンパク質にアレルゲンの特徴と類似点がないかどうか、開発の段階で徹底的に調べ、ここでアレルゲンとなる可能性が少しでもあれば、開発はもちろん中止します。
→具体例については、>Q12をご参照ください。
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具体的には既に知られているアレルゲンの特徴と類似点がないかどうか調べます。
- ①構成するアミノ酸の配列に類似点がないか確認
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既知アレルゲンのアミノ酸の配列はデータベース化されています(2009年1月現在:1,386、ネブラスカ大学アレルゲンデータベース:http://www.allergenonline.com)。これらアレルゲンとの間で、アミノ酸配列に類似点がないか、調べます。
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②アレルゲンに共通する性質を持っていないか確認
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これまでの研究によって、アレルゲンには次のような特徴があることがわかっていますので、組み込まれた遺伝子によって新しく作られるタンパク質が、これらの条件に当てはまらないかどうか調べます。
- 胃液や腸液で消化されにくい
- 加熱による変性を受けにくい
- その食品中に高濃度に含まれていて、主要タンパク質である
- 分子量が比較的大きい(10-70kD)
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現在の遺伝子組み換え食品は、アレルギーについては上記のように詳細に調べられており、従来の食品と比較して同じように食べても安全であることが確認されています。しかしあくまでも「従来の食品と同じ」ということで、大豆に対するアレルギーを持っている人の場合は、従来の大豆と同様に遺伝子組み換え大豆に対しても注意が必要です。
なお、遺伝子組み換えによって、作物中のアレルゲンの含有量を少なくする研究が現在進められています。実現すれば、お米などに対するアレルギーを持つ人でも安心して食べられるようになると期待されています。
まず、直接携わっている開発企業自身が、安全性について十分検討を行っていることはいうまでもありません。さらに、日本で流通する
遺伝子組み換え食品は、厚生労働省と食品安全委員会によって安全性が確認されます。申請者によって厚生労働大臣に提出されたデータは、内閣府の中の食品安全委員会と、その下部部会である
遺伝子組換え食品等専門調査会において審議されリスク評価されます。
遺伝子組換え食品等専門調査会は、日本における食の安全性や
遺伝子組み換え技術についての第一人者の科学者、医師などを含む各分野の専門家によって構成されており、安全性に疑わしい点がないか、不備がないかなどを、科学に基づき十分検討して安全性が確認されています。食品安全委員会は、7名の委員によって構成されています。また、食品安全委員会も、
遺伝子組換え食品等専門調査会も国民が傍聴できるようになっていて、その審議会の議事録などもホームページなどで公開されて情報の透明化が図られています。また、もしその内容に不服があれば、パブリックコメント等の手段で国民が意見を出す機会も設けられています。
遺伝子組み換え食品は、このような安全性審査の手続きを経て初めて、国内で流通することが承認されるのです。
害虫に強い性質を持つ
遺伝子組み換え農作物として、現在、日本ではトウモロコシ、ワタ、ジャガイモなどが既に安全性を確認されて、市場に流通しています。害虫が死んでしまうというと、何だか怖いイメージですが、人間とは全く異なる生理機構によって害虫が死ぬものです。害虫に強い性質を持つ
遺伝子組み換え農作物に含まれている
Btタンパク質は、人や家畜などには影響がないことが確認されています。
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害虫に強い性質を持つ遺伝子組み換え食品には、バチルス・チューリンゲンシス(Bt:Bacillus thuringensis)という土壌中に存在する微生物から取り出したBtタンパク質を作る遺伝子が含まれています。このBtタンパク質は、トウモロコシ栽培に多大な被害を与えるヨーロピアンコーンボーラーという害虫の防除に役立ちます。
ヨーロピアンコーンボーラーなどの標的害虫は、Btタンパク質に特異的に反応する受容体を消化管内に持っているため、消化管に入ってアルカリ性の環境で活性化されたBtタンパク質が受容体に結合します。その結果、消化管が破壊されて食べ物を正常に消化することができなくなってしまい、数日経つと死んでしまいます。
一方、人や牛、豚、鶏などはこの受容体を持っておらず、胃も酸性なので、Btタンパク質を食べても他のタンパク質と同様に消化などされてしまいます。
害虫が死んでしまうタンパク質が含まれていると聞くと、誰もが不安に感じられると思いますが、Btタンパク質は人や家畜などには影響がないことが確認されています。バチルス・チューリンゲンシスは、日本の科学者が発見した微生物で、人間に安全な微生物農薬として高く評価されており、世界各国で安全に使われてきた歴史があります。
遺伝子組み換え農作物の飼料としての安全性は、飼料の安全性確保及び品種の改善に関する法律「飼料安全法」に基づき農林水産省によって確認されています。安全性審査が終了した
遺伝子組み換え飼料や飼料添加物でなければ、国内での流通や使用は認められません。
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農林水産省で行われている飼料としての安全性審査は、食品の安全性審査と考え方の基本は同じです。つまり従来のものと同様に安全かどうか評価されます。
飼料として流通している遺伝子組み換え農作物は、飼料としての安全性審査だけではなく、基本的に食品としての安全性審査も受けていています。動物の場合も人間の場合と同様、遺伝子組み換えによって組み込まれたDNAや、新たに作られたタンパク質は、他の飼料中の成分と同様に消化されます。ですから、組み換えによって新たに作られたタンパク質が家畜の肉などに蓄積したり、乳や卵に移行することはなく、それらを食べても私たちの健康に何ら影響を及ぼすことはありません。
欧州食品安全機関は、遺伝子組み換え飼料を与えられた家畜の乳、肉、卵に関する文献調査を行い、摂取したDNAやタンパク質はヒトや動物の体内で素早く分解され、家畜の乳、肉、卵にも変化がないことを確認しています。
(http://www.s.affrc.go.jp/docs/anzenka/html/colum9/category_a/topics_080311b.pdf)
(http://www.s.affrc.go.jp/docs/anzenka/html/colum9/category_a/topics_080311b.htm)
1998年、英国のロウェット研究所のパズタイ博士が、
遺伝子組み換えジャガイモを食べさせたラットの免疫力が低下したとテレビ番組の中で発表し、話題になりました。しかしこの実験には、不十分な点が多いことがわかり、今では問題視されることもなくなりましたが、一部の消費者に「
遺伝子組み換え食品は危ない」という記憶が刷り込まれたとすれば、残念なことです。
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博士がテレビ発表したあと、ロウェット研究所や英国王立協会の調査によって、博士の実験の不備が指摘され、免疫力が低下したのは遺伝子組み換えによる影響とはいえないことが明らかにされました。 しかし何よりも問題なのは、この実験で使用されたジャガイモは、安全性が確認されたものではなかったということです。博士が用いたジャガイモには、安全性に問題のあるレクチンというタンパク質を作る遺伝子が導入されたもので、実験用にわざわざ作られたもので、商品化されて市場に流通しているものではありませんでした。
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開発企業は安全であることを最優先に、遺伝子組み換え食品の開発を行っています。ですから、レクチンのように健康に悪影響を及ぼす恐れがある成分を作る遺伝子を組み込むことは、決してありません。仮に、レクチンを作る遺伝子組み換えジャガイモが開発されたとしても、安全性審査において認められることはありませんので、このような遺伝子組み換え食品が私たちの口に入ることはありません。
この事件は、米国において1989年後半におきたもので、L‐トリプトファン含有食品を食べた人の中から健康被害が続出したというものです。この食品に
遺伝子組み換え技術が用いられていたことから、
遺伝子組み換え食品の安全性について危惧する声があるようですが、原因は製造工程で生成された不純物を除去しきれなかったことにより引き起こされたもので、
FDAや厚生労働省によるその後の調査によって、
遺伝子組み換えによるものとはいえないとされています。
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当時、L‐トリプトファンを主成分とする健康食品を食べた人の間で、けいれんや筋肉の痛み、麻痺などの症状を訴えるEMS(好酸球・筋肉痛症候群)という病気が多発し、患者数は1500人以上、39名の死者を出すに至ったといわれています。問題のL‐トリプトファンは、日本の企業が遺伝子組み換え技術によって微生物に作らせて製造したものでした。事件後の調査の結果、L‐トリプトファンの製造工程で発生した不純物EBT(1,1'-ethylidenebis[L-tryptophan])とPAA(3-anilino-alanine)が混ざっていたことがわかりました。これは、精製濾過の過程で使用する活性炭の量が少なく、不純物が除去しきれなかったため、最終製品に混入してしまったためであるとみられています。また、これらの不純物の発生が遺伝子組み換え技術と関連があるとはいえないとされています。 EBTとPAAがEMSを引き起こすかどうかはさらに研究が必要ですが、この事件はこの企業が和解金を患者に払ったことによって決着し、原因究明は途中で打ち切られています。 しかしその後、米国の企業が遺伝子組み換え技術を用いてL‐トリプトファンを製造し、現在も販売していますが、問題は起っていません。この事実からも、この事件が遺伝子組み換えによって引き起こされたものではないと考えられています。
過去に米国の企業が、飼料用の大豆の栄養価を高める目的で、ブラジルナッツの
タンパク質を含む大豆を、
遺伝子組み換え技術によって開発しようとしたことがありました。しかし、開発段階でアレルギーを引き起こす可能性があることが明らかになり、開発は中止されて商品化には至りませんでした。開発途中で終わったこのブラジルナッツの件が、誤解されて伝わったものと思われます。
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従来ブラジルナッツには、アレルギー誘発性があることが知られていましたが、アレルゲンまでは特定されていませんでした。そこで、ブラジルナッツに対するアレルギー患者の血清を用いて調べたところ、ブラジルナッツ由来の遺伝子を組み込んだ大豆はアレルギーを引き起こすことが確認されました。さらにこの研究によって、ブラジルナッツのアレルゲンも特定できるようになりました。このように、遺伝子を組み換えることによってアレルギーを引き起こすことがないように、事前に慎重に確認されており、もし引き起こすような可能性が明らかになれば開発は即、中止されます。
これまでに
抗生物質耐性
遺伝子が腸内細菌に移行して、
抗生物質が効かなくなったという報告はありません。マーカー
遺伝子として
抗生物質耐性
遺伝子が使用されている場合、その
遺伝子によって新たに作られる
タンパク質の安全性についても十分審査されて確認されています。食品中の
遺伝子の大半は、胃や腸で分解されてしまいますし、植物の
遺伝子が細菌に取り込まれて発現する可能性は、まずありません。
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遺伝子組み換え農作物の開発において、目的の遺伝子が組み込まれたことを確認するために目印となるマーカー遺伝子を一緒に組み込むことがありますマーカーとして抗生物質耐性遺伝子を使用している場合、抗生物質が効かなくなるのではないか、と心配する声が聞かれます。組み込んだマーカー遺伝子によって作られたタンパク質は、胃液や腸液によって速やかに消化されてしまうことが確認されています。従って、腸内細菌に影響を与える可能性はありません。また、このタンパク質がアレルギー誘発性を持たないかどうか、毒性を持たないかどうか、摂取量はどの程度などについても調べられ安全性が確認されています。 しかし、消費者の方の懸念を考慮して、開発企業は抗生物質耐性遺伝子以外のマーカーを使用したり、まったく新しいタイプのマーカーを開発したりしています。