結論:このジャガイモは、レクチンという成分を含む研究用の特殊なジャガイモで、商品化されたものではありません。パズタイ博士の報告を受けて、博士の所属していた英国のロウェット研究所や、英国新規食品・加工諮問委員会(Advisory Committee on Novel Foods and Processes:ACNFP)が、実験結果の検証を行った結果、博士の実験そのものや使用されたジャガイモに問題があったことが明らかとなり、ラットの免疫力が低下したと結論することはできないと結論づけられています。なお、このジャガイモの研究は中止されましたので、市場に出回ることはありません。
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発端
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1998年、英国ロウエット研究所のパズダイ博士が「レクチンという成分を含む遺伝子組み換えジャガイモをラットに食べさせる実験を行ったところ、ラットに免疫力の低下がみられた(*1)」とテレビ番組において発言しました。
さらにその翌年には、アバディーン大学のイーウェン博士(パズタイ博士の共同研究者)が、同様の遺伝子組み換えジャガイモをラットに食べさせる実験を行ったところ、ラットの胃の内壁や小腸などに異常が見られたとランセット誌に発表(*2)しました。
これらの発表は日本を含む各国で、メディアなどを通じて紹介され、「遺伝子組み換えジャガイモを食べると、免疫力が落ちるのではないか」と、一部の消費者の間で不安の声があがりました。
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検証
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パズタイ博士の実験からは科学的に正しい評価は下せません
パズタイ博士の実験は、まず、遺伝子組み換えによって「レクチン」という成分を含む実験用のジャガイモを作り、そのジャガイモを5匹のラットに110日間食べさせたところ、ラットに軽度の発育不全と免疫力の低下が見られたという内容でした。しかし、パズタイ博士の所属していたロウエット研究所がパズタイ博士の提出した報告書を検証した結果、この実験には以下の点で問題があり、このジャガイモを食べたことが原因であると結論付けることは出来ないとされています。(*1)
- ラットに与えた飼料中のタンパク質量が少なく、飼料の栄養バランスが悪いため、ラットの健康上の問題がある。
- 実験で用いたレクチンを含む遺伝子組み換えジャガイモは、対照実験で用いた非組み換えジャガイモとは品種が異なっているので、科学的に正確な比較ができない。
- ラットに生のジャガイモを食べさせた結果と、加熱して食べさせた結果を同じように評価するなど、結果分析に一貫性がない。
研究所では、本研究発表は研究途中の段階で行われたものであり、遺伝子組み換え作物の安全性に対する誤解を招いたとして、彼を免職処分としました。
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イーウェン博士の実験は、博士自身が不十分な点が多いと結論付けています
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パズタイ博士の共同研究者のイーウェン博士は、同様の実験によってレクチンを含む実験用ジャガイモを10日間ラットに与えたところ、ラットの胃や小腸に異常が見られたという実験結果(*2)をランセット誌に発表しました。しかし、この研究結果については、博士自身が実験の設計や統計分析については不十分な点が多いと認めており、免疫力の低下が、遺伝子組み換えジャガイモが原因かどうかは特定できないとしています。
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調査によって実験自体に問題があったことが明らかになっています
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さらに英国食品基準局(Food Standards Agency:FSA)の新規食品・加工諮問委員会(Advisory Committee on Novel Foods and Processes:ACNFP)が、パズタイ博士とイーウェン博士の実験について検証を行った結果、最終的に、「彼らの実験設計とデータからは、このレクチンを含む遺伝子組み換えジャガイモがラットの免疫力を低下させるという結論は引き出せない」(*3)と分析しています。日本の厚生労働省も、この問題についてHPで解説を行っていますが、「ラットに発育不良が見られ、また免疫系の抑制がみられたとしているが、この結論は不正確な論拠に基づく。」というロウエット研究所の見解を紹介しています。(*4)
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このジャガイモは実験用のジャガイモで、その後の開発は中止されています。遺伝子組み換え食品は商品化の前に、国によって安全性が確認されています
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この実験に使用されたレクチンを含む遺伝子組み換えジャガイモは、博士が実験用につくったもので、食品としての安全性が確認されて、市販されたものではありません。レクチンは、消化不良を起こすなどの作用が知られており、生で食べた場合に影響がでることは予想できたことです。遺伝子組み換え食品が一般に販売される際には、必ず安全性が確認されたうえで市場に流通することになっているため、このような研究段階のジャガイモが消費者の口に入ることはありません。(*5)(*6)(*7)
結論:遺伝子組み換え作物を作るときには、
遺伝子が組み込まれたことがわかるように、目印として
抗生物質耐性
遺伝子が用いられることがあります。これらの
抗生物質耐性
遺伝子は、食べた後で消化されてしまいます。したがって、これらの
遺伝子が人間の腸の中にいる細菌に取り込まれて、
抗生物質が効かない細菌が増えて問題になるということはほとんどありません。また、
遺伝子組み換え食品の安全性審査においても、この点については詳細な検討が行われ、安全性が確認されたものだけが商品化されています。
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発端
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遺伝子組み換え作物を作るときには、遺伝子が組み込まれたことがわかるように目印として選択マーカー遺伝子を用います。この選択マーカー遺伝子として抗生物質が効かなくなる遺伝子(抗生物質耐性遺伝子)が用いられることがあります。そこで、遺伝子組み換え食品を食べると、腸内で抗生物質耐性遺伝子が腸内細菌に移り、結果として、抗生物質が効かない細菌が増えてしまい、病気になったときに抗生物質を服用しても聞かなくなってしまうのではないかという疑問がメディアなどで紹介されたことがありました。
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検証
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遺伝子は体内で消化されるため、腸内に残る可能性はほとんどありません
組み込んだ遺伝子は分解酵素によって分解されるため、腸内に残る可能性はほとんどありません。また、抗生物質耐性マーカー遺伝子が用いられている遺伝子組み換え食品の場合は、安全性審査の際に、その遺伝子が作るタンパク質(抗生物質代謝酵素)が人口胃液・腸液で分解されるかどうか、加熱などの調理によって分解されるか、さらにその摂取量などについて検討されており、懸念されている抗生物質が効かない細菌が増えることがないかなどが確認されています。(*1)
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植物の遺伝子が微生物に移ったり、微生物の中で働く可能性はほとんどありません
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食品安全委員会でも、抗生物質耐性遺伝子に関しては、現在、抗生物質耐性マーカーとして使われているカナマイシン耐性遺伝子等、適切に安全性の評価がなされたものについては、直ちに安全性上問題となるものではなく、「現時点では、摂取されるDNAの量や、その消化性を考慮すると、組み換え植物から腸内細菌あるいはほ乳類の細胞等へ遺伝子が移る確率は極めて低く、安全性上の問題にはならない」としています。(*5) また、審査にあたっては、抗生物質耐性遺伝子の安全性について、安全性審査のための詳細なデータを求めており、安全性について問題ないと結論づけています。(*6)
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行政などの安全性審査でも安全性が確認されています
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食品安全委員会でも、抗生物質耐性遺伝子に関しては、現在、抗生物質耐性マーカーとして使われているカナマイシン耐性遺伝子等、適切に安全性の評価がなされたものについては、直ちに安全性上問題となるものではなく、「現時点では、摂取されるDNAの量や、その消化性を考慮すると、組み換え植物から腸内細菌あるいはほ乳類の細胞等へ遺伝子が移る確率は極めて低く、安全性上の問題にはならない」としています。(*5) また、審査にあたっては、抗生物質耐性遺伝子の安全性について、安全性審査のための詳細なデータを求めており、安全性について問題ないと結論づけています。(*6)
結論:遺伝子の導入によって新たに作られた
タンパク質がアレルギーの原因とならないかについては、国際基準に則って特に詳しく調べられており、その可能性は極めて低いことが確認されています。事実、これまでに商品化された
遺伝子組み換え食品の中で新たに作られた
タンパク質が原因でアレルギーが引き起こされたという事例はありません。
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発端
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2002年にオランダの研究者クレター(Gijs A Kleter)が、遺伝子組み換え作物中に新しく作られたタンパク質と、既に知られているアレルゲン(アレルギーの原因物質)のアミノ酸配列の比較を、当時の安全性評価で行われている方法と条件を変えて行ったところ、より多くのアレルゲンとの一致がみられたと発表しました。具体的には、当時の安全性審査では、8つのアミノ酸の並び順が一致しているかを調べていますが、6つに減らして調べたというものです。(*1) この論文を発表したクレター自身は、このタンパク質が本当にアレルゲンになる可能性があるかどうかを判定するためには、さらに確認試験が必要であると結論付けています。
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検証
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複数の調査項目を総合的に検討し、事案ごとに慎重に安全性を確認しています
安全性評価の際には、遺伝子組み換え作物に新たに組み込まれたタンパク質がアレルゲンにならないかについては特に詳しく多方面から調べられています。
調査する項目は以下の通りです。
- 組み込む遺伝子の供与体のアレルギー誘発性に関する知見
- 新たなタンパク質のアレルギー誘発性に関する知見
- 新たなタンパク質の物理学的処理(人工胃液や人工腸液、加熱など)に対する感受性
- 新たなタンパク質と既知のアレルゲンとの構造的な相同性
議論になった項目は、「生じるタンパク質と既知のアレルゲンとの構造的な相同性」についてです。タンパク質は20種類のアミノ酸がつながって出来ています。アレルゲンとなるアミノ酸配列と似ているものは、アレルギー反応を引き起こす可能性が高いと考えられることから、アミノ酸配列について調べます。
例えば、調査するアミノ酸配列を8つから6つにするとしたら、以下の問題点が生じます。
<6つの配列を比較することについての問題点>
アミノ酸の並び順が8個一致する箇所を調べるより、6個という短いもので比較すると、当然、一致する確率は400倍(20アミノ酸x20アミノ酸)も高くなります。例えば、食品の中でもトウモロコシはアレルギーになる人が最も少ないといわれていますが、そのトウモロコシ中に含まれる、これまでにアレルギーを引き起こしたことが報告されていない50個のタンパク質でさえも、41個のタンパク質(82%)が、既に知られているアレルゲンと一致するアミノ酸配列を持っていると判定されてしまいます。すなわち、この方法ではFalse Positive(本当はそうでないのに、そうだと結論してしまうこと)の率が非常に高くなり、正しい検証ができなくなってしまうのです。(*2) 食品安全委員会の遺伝子組み換え食品専門調査会の見解でも、アミノ酸配列の相同性検索を7つ、または6つの連続したアミノ酸で行うと、アレルギーを引き起こす可能性がない多くのタンパク質まで相同性ありという結果が出てしまうと指摘しています。(*3)
アレルギーを引き起こさないかどうか、さまざまな角度から安全性が確認されています
2003年にコーデックスから出された指針では、調査するアミノ酸配列の長さは特定しておらず、偽陽性の少ない条件を用いるべきであると記載されています。現在は、アミノ酸配列の相同性に加えて、全体的な相同性検索や、そのタンパク質の消化性や加熱による分解性など、さまざまな試験の結果を総合的に検討し、事案ごとに慎重に安全性を確認しています(*4)。
遺伝子組み換え食品は、アレルギーについて詳細に調べられており、従来の食品と比較して同じように食べても安全であることが確認されています。
結論:
現在栽培されている
遺伝子組み換え大豆は、特定の除草剤の影響を受けないことを特徴とする品種です。収量を増やす
遺伝子を組み込んだ品種ではありませんが、除草作業の効率が良くなり、従来よりも、畝(うね)の間隔を狭くして植えることが可能になり、単位面積当たりの収量を確保できることから米国では栽培農家が年々増えています。
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発端
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1999年、米国元農務省の研究者チャールズ・ベンブルック氏は、8つの大学から除草剤耐性の遺伝子組み換え作物(ラウンドアップ・レディーダイズ)の栽培試験結果を集め、解析したところ、在来種よりも組み換えダイズの収量のほうが数%少なかったと発表しました。(*1)
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検証
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ベンブルックレポートには同じ栽培品種で比較していないなどの問題点があると、科学者から指摘されています
大豆にはさまざまな栽培品種があり、収量も品種によって多少異なります。したがって、同じ栽培品種で比較しなければ、本当に組み換え大豆の収量の方が在来種に比べて減っていると結論することはできません。しかも、ベンブルックレポートでは、異なる品種を用いて比較を行っています。
一例を挙げると、ウィスコンシン州の北部で行われた調査では、在来種70品種とラウンドアップ・レディー8品種を比較しており、比べた品種およびその数も大きく異なっており、科学的に正確な比較ではありませんでした。
米国農務省によると、1966年から始まったラウンドアップ・レディー大豆の商業栽培面積は年々増え続けており、2005年には米国で作付けされる大豆全体の87%を占めるまでになりました。(*2)
もし、ベンブルック・レポートのように減収となってしまう大豆ならば、農家は栽培しなくなるので、このように毎年増え続けることはないと考えられています。
米国の民間調査機関NCFAP(食糧・農業政策ナショナルセンター)の発表によると、害虫抵抗性や除草剤耐性などの性質が付け加えられた遺伝子組み換え作物の栽培によって、農薬使用量削減による農薬購入費用の削減および農薬散布のためのエネルギー費や人件費の削減などが可能となります。また、害虫による減収も防ぐことができるため、結果として生産性も向上し、農家の収益が26億ドル(2006年)増加したという結果が出ています。(*3)
インドや中国では害虫抵抗性ワタの栽培によって、増収が期待できるという報告があります。(*4)(*5)
アジアの国々でも遺伝子組み換え作物の増収メリットに期待が寄せられています。(*6)
結論:
英国で
遺伝子組み換え大豆を含むハンバーガーを食べる実験を行ったところ、ごく低いレベルで腸内細菌から除草剤
遺伝子が検出されましたが、英国食品基準庁(FSA)は実験結果を受けて、
遺伝子組み換え食品を食べることによって、その食品中に含まれる組み換え
遺伝子がヒトの腸内細菌に移行する可能性は極めて低いと結論づけています。
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発端
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FSAの委託によりニューカッスル大学がボランティア7人(大腸を切除しており人工肛門を使用している)を対象に、遺伝子組み換え大豆を含むハンバーガーを食べさせる実験を行い、大便から腸内細菌を取り出して培養したところ、非常に低いレベルですが遺伝子組み換え大豆に組み込まれている除草剤耐性遺伝子が検出されました。これによって、組み換まれた遺伝子が腸内細菌や、ヒトの小腸上皮細胞に移行するのではないかとの懸念が生まれました。(*1)
- 検証
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FSAでは安全性について心配がないと表明しています
この実験は遺伝子組み換え農作物の中に組み込まれた遺伝子が、ヒトの腸内細菌やヒトの小腸上皮細胞に転移する可能性について検討することを目的に、FSAの委託により、ニューカッスル大学が実施しました。実験は健常人12人と、小腸人工肛門を持つボランティア7人を対象に行われ、遺伝子組み換え大豆を含むハンバーガーを食べさせて、大豆に組み込まれている除草剤耐性遺伝子が排泄物中や腸内細菌に含まれるかどうかを調べました。 まず、排泄物中の除草剤耐性遺伝子を調べる実験では、小腸人工肛門を持つボランティアの排泄物からは除草剤耐性遺伝子が検出されましたが、健常人の大便からは検出されませんでした。つまり小腸で消化後は除草剤耐性遺伝子の一部が残っていることがありますが、その後、大腸を経た後には完全に消化されてしまうことを示しています。 排泄物中のバクテリアを取り出して培養する実験では、小腸人工肛門を持つボランティアの排泄物からは除草剤耐性遺伝子が検出されましたが、健常人の大便からは検出されませんでした。この結果について研究チームは、この実験から想定されるレベルで腸内細菌への遺伝子の転移がおこったとしても、それによってヒトの消化機能に影響を及ぼしたり、ヒトの健康への影響はほとんどないとしています。 これをうけてFSAでは「遺伝子組み換え食品を食べることによって、その食品中に含まれる組み換え遺伝子がヒトの腸内細菌に移行する可能性は極めて低い」という結論を出し、安全性について心配がないことを表明しました。
遺伝子組み換え物質が消化されることは安全性審査において確認されています
日本でも、食品安全委員会遺伝子組み換え専門調査会が、組み込んだ遺伝子の腸内細菌への移行などに関して「現時点では摂取されるDNA量、その消化性を考慮すると、組み換え植物から腸内細菌あるいは哺乳類への遺伝子伝播が起こる確率はきわめて低く、安全性上の問題にならないと考え、評価項目にはしていない」とコメントしています。(*2)
結論:
この実験はロシアの科学者イリーナ・エルマコバ(Irina Ermakova)博士が行ったものですが、英国食品基準庁から、「この実験からいかなる科学的で客観的な結論も引き出すことはできない」との声明が出されているだけでなく、複数の機関や専門家から下記のような問題点が指摘されています。このことから、エルマコバ博士の実験は、
遺伝子組み換え大豆の安全性について科学的に検証したとはいえないとされています。
- 得られたデータのばらつきが大きく、飼料の与え方や飼育方法のずさんさが影響して、生育不良となった可能性が高い。
- 安全性を評価する国際的なガイドラインなどに沿った試験方法ではない。
- 動物の数が少なすぎて、なんらかの結論を導き出せるものではない。
- 仔ラットを適切に選抜しておらず、栄養面などの問題で発育不良の原因となった可能性もある。
- 遺伝子組み換え大豆を食べていないグループでも生育不良が多く見られる。飼料の成分自体に問題があり発育不良となった可能性がある。
日本の厚生労働省、農林水産省も、「わが国では、全ての
遺伝子組み換え食品について、食品安全委員会において安全性評価が行われており、
遺伝子組み換え大豆を食する場合でも問題はありません」と結論づけています。
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発端
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ロシア科学アカデミー高次機能・神経行動学研究所所属のイリーナ・エルマコバ博士は2005年10月、ロシア遺伝子組み換えシンポジウムにおいて、「除草剤耐性の遺伝子組み換え大豆をラットに食べさせたところ、生まれた仔ラットは生後3週間で過半数(55.6%)が死亡し、成長も遅かった」と発表しました(*1)。「通常の飼料を与えた場合(死亡率6.8%)や、普通の大豆(非遺伝子組み換え)を与えた場合(死亡率9%)と比べて、ラットの死亡率が高まった」として、この報告を知った消費者団体などから、遺伝子組み換え大豆は次世代へ重大な影響を与えるのではないかとの懸念の声があがりました。
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検証
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1.
遺伝子組み換え大豆を与えていないグループでもラットの発育が悪い
-
注目すべきは、今回の試験結果では、遺伝子組み換え大豆を与えていないグループでも仔ラットの発育が悪いことです(表1)。 対照群で、大きい仔ラットは40~50gであるのに対し、30g以下が半数もいます。通常、対照群の体重のばらつきは、せいぜい10%以内に抑えられているものであり、そうでなければ信頼度の高い結果とはみなされません。 また、普通の大豆を与えた群では、30g以下の仔ラットが実に8割も占めています。遺伝子組み換え大豆を与えていないグループでも、これだけ発育不良がみられるということは、栄養状態や飼育管理そのものに問題があった可能性をうかがわせる結果です。
表1:各グループの仔ラットの体重分布(2週間後)
| 与えた飼料 |
50~40g |
40~30g |
30~20g |
20~10g |
| 通常飼料(対照群) |
12.5% |
37.5% |
44% |
6% |
通常飼料+
遺伝子組み換え大豆 |
0% |
23% |
41% |
36% |
| 通常飼料+普通の大豆 |
0% |
20% |
73.3% |
6.7% |
Irina Ermakova: Influence of genetically modified soya on the birth-weight and survival of rat pups (*1)
2.安全性を評価する国際的なガイドラインなどに沿った試験方法ではない
生まれてくる仔への影響を調べるために行われる動物試験には、繁殖毒性試験や催奇形性試験(奇形の仔が生まれないかどうか調べる)があり、国際的に確立された方法がガイドラインなどに定められています。安全性を評価するための動物試験は、まずガイドラインに則って実施されることが必要であり、このガイドラインに従って行われていれば、結果も信頼度が高いデータであるとみなされています。しかし、今回の試験は、国際的な動物試験のガイドラインに沿ったものではなく、専門家等からは特に次のような問題点が指摘されています。
3.動物の数が少なすぎる
標準的な2世代繁殖毒性試験では、1群につき親世代で最低20組の雌雄のラットを用いますが(*2)、今回の試験では、遺伝子組み換え大豆を与えた群は6組、普通の大豆を与えた群は3組、通常飼料のみを与えた対照群は6組しか用意していません。
傾向をつかむために行うような予備的な実験でも最低8組程度は用意するのが一般的ですので、それ以下の場合は、科学的に何か導き出せるような実験結果とみなされないと専門家は指摘しています。
4.仔ラットを適切に選抜しておらず、発育不良の原因になった可能性がある
通常、ラットの親1組からは、10匹以上の仔ラットが生まれます。しかしこのままでは母ラットのミルクが仔ラットに十分にいきわたらずに、発育不良となってしまうので、一般的な2世代繁殖試験では、生後4日に雌雄各4匹になるよう余分な新生児を取り除き、母ラットが育てる仔ラットの数をそろえます。生後3週間後の離乳時に雌雄各1または2匹を選抜し、育成後に繁殖させて孫世代までの影響を確認するのです(*2)。ところが、エルマコバ博士はそのような処理を行っていないので、仔ラットに栄養がいきわたらず、これが発育不良の原因となった可能性があります。
エルマコバ博士は「遺伝子組み換え大豆を食べさせた雌ラット4匹から、仔ラットが45匹生まれたが、3週間後には25匹(55.6%)が死亡した」としていますが、この場合、親は4組なので、実験データとして用いることができる仔ラットは本来、雌雄各4匹または8匹です。仔ラット45匹という数だけみると、大規模に実施されたかのような印象を受けますが、標準的な方法で実施されていればこのような数は導き出されません。
5.飼料の成分自体に問題があり、発育不良となった可能性がある
表1をみると、普通の大豆を与えたグループでも低体重が多く見られることから、原因は遺伝子を組み換えたことではなく、栄養バランス不良による影響も考えられます。
動物試験の際には、試験物質の毒性による影響ではなく、実験動物が栄養バランスを崩すことによって、間接的な健康障害が表れないように、飼料の成分に十分な配慮が払われます。一般的には試験物質を通常飼料の中に均一に混ぜて、栄養価や非栄養成分に差異が生じないように調製された飼料を用いて、摂餌量を定期的に記録します。そして試験物質の摂取量を算出します。
しかし今回の実験では、通常飼料と、遺伝子組み換え大豆を別々に置いて、ラットに自由摂取させています。そして、ラットがそれぞれをどれぐらい食べたのかが明らかにされていません。これではラットが健康な成育に必要な量の通常飼料を食べて、ビタミンやミネラルをきちんと摂取できていたかどうかを判断することができません。遺伝子組み換え大豆の摂取量も不明であり、飼料自体に問題がなかったかを判断するための情報すら明確にされていないという、決定的な問題点があります。
実験の条件に不明な点が多すぎるため、再現性がないと考えられる
実験結果が科学的に信頼できるものであるかを判断するうえで、最も重要なことは、「再現性」があるかどうかです。つまり、誰がどこで何回試験しても、同じ結果が得られるのであれば、そのデータの信憑性は高いといえます。しかし、同じように試験を繰り返してみても、結果を再現できないのであれば、単なる偶然の産物か、あるいは実験ミスである可能性が高いといわざるを得ません。
実験を再現するためには、実験の方法や条件が明らかにされていることが大前提です。逆に言えば、実験条件が不明確であり、再現できないような実験は、データとしての意味を成しません。 エルマコバ博士の実験報告には、通常飼料の組成や摂取量、遺伝子組み換え大豆の割合や摂取量などの重要な情報についての記載がなく不明で、この実験を再現することができません。
この報告に対しては、既に各機関から疑問点などが指摘されています
英国食品基準庁「新規食品と製造工程に関する諮問委員会(ACNFP)」はこの実験について、『報告の中で多くの重要な情報がない以上、この実験からいかなる結論も引き出すことはできない』との声明を発表しています(*3)。その他にも問題点として、「死亡したラットの死因に関するデータがない。」「マイコトキシン(カビ類が産生する毒素の総称)等、混入物の存在を否定する情報がない。」ことなどを指摘しています。
生殖毒性試験の専門家などからも、
飼料の与え方や飼育方法がずさんであったとこが大きく影響した可能性が指摘されており
、遺伝子組み換え大豆の安全性について科学的に検証したとはいえないとされています。
この
遺伝子組み換え大豆の安全性は多くの試験によって確認されています
日本の厚生労働省(*4)、農林水産省(*5)も、ACNFPの声明を紹介してこの報告の問題点を明らかにするとともに、『わが国では、全ての遺伝子組み換え食品について、食品安全委員会において安全性評価が行われており、遺伝子組み換え大豆を食する場合でも問題はありません』と結論づけています。
また、東京都でもマウスを用いて、遺伝子組み換え大豆を含む飼料を13週間摂取させた親から生まれた子を交配させ子供を産ませて、第二世代にわたり影響を確認したところ、交配率、妊娠率、出産率、出生仔の数や発育状態に問題はなく、遺伝子組み換え大豆の次世代への影響はないものと考えられると報告しています(*6)。
なお、マウス4世代に渡る試験で、遺伝子組み換え大豆は死亡率や成長に影響を与えないことが論文にて報告されています(*7)。また、ラット、ニワトリ、ナマズ、乳牛への給餌試験も多数行われていますが、安全性の問題は指摘されていません(*8)(*9)(*10)。これらの論文は、専門家による査読を経て認められたうえで掲載されているものであり、より信頼度が高い報告であるといえます。
【備考】エルマコバ博士は同様の試験を追試し、追加したデータも発表しておりますが、本検証は当初発表した試験結果(*1)に基づいて行いました。