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日本:花粉症緩和米の開発

日本では特に、イネの遺伝子組み換えの研究が盛んに行われていて、いもち病や白葉枯病などに強い品種や、冷害の影響を受けにくい品種、草丈が低くて倒伏しにくい品種、稲作に適さないアルカリ土壌でも育つ品種、塩害に強い品種など、様々なイネが遺伝子組み換え技術によって開発されています。これらの遺伝子組み換え作物が開発されれば、従来よりも収穫量が増えたり、これまでは稲作ができなかったような土地でもイネを栽培できるようになると期待されています。
このような食糧増産に貢献する研究のほかに、農林水産省が現在、積極的に開発を進めているのが「スギ花粉症緩和イネ」です。このコメを定期的に食べれば花粉症によるアレルギー反応を抑えることができるという画期的なイネの研究が進めば、安価でしかも手軽に花粉症対策が可能になると期待されています。今や日本国民の5~6人に1人は花粉症とも言われており、研究主体である(独)農業生物資源研究所には、商品化を待ち望む声が多数寄せられているそうです。
スギ花粉症緩和イネは2005年と2006年に、隔離圃場で試験栽培を行い、環境に対する安全性を確認しました。その後、タンパク質の分析を行い、食品としての安全性も確認しました。また、マウスにこのコメを摂取させた後、スギ花粉アレルゲンへの反応を調べたところ、くしゃみが約1/3~1/4になるなど、普通のコメを摂取したマウスと比較して、概して症状が軽く、花粉症緩和としての機能も明らかになりました。2007年には、医薬品であるとの判断を受け、さらに今後、花粉症の自然発症をしたサルを用いた給餌試験などを行う予定です。
さらに、家畜にとって重要なアミノ酸を増強し、飼料用途に適したイネを開発する研究や、環境問題に貢献する開発(バイオレメディエーション)として、根からカドミウムを吸収して土壌を浄化するイネの研究なども行われています。イネは全ゲノムが解読されて、今後はその遺伝情報を活用していく段階です。遺伝子組み換え技術を用いることによって、イネの活用分野はより多岐にわたるものになると期待されます。
農業生物資源研究所HP
http://www.nias.affrc.go.jp/gmo/gmotop.html

米国:飼料やバイオ燃料源として有用な農作物の研究

トウモロコシは食品以外に、飼料としても大変重要な作物です。そして、これから増加が見込まれているのがバイオエタノールなどの燃料用途としてのトウモロコシの活用です。そこで、飼料や燃料の原材料としてより適した品種の開発が、遺伝子組み換え技術を用いて進められています。
飼料用途としては、家畜に必要なアミノ酸リシンを多く含むトウモロコシが開発されています。リシンは動物の筋肉の発達に欠かせないアミノ酸で、通常のエサにはリシンを添加して不足を補っています。しかし、リシンは比較的コストが高いのですが、高リシントウモロコシの場合は後から添加する必要がないため、畜産業者の生産コスト削減と生産効率向上につながります。
また、石油などの化石燃料にかわる新たな燃料のひとつとして、トウモロコシなどの植物由来のバイオエタノールが脚光をあびています。バイオエタノールは、デンプンなどの糖類を醗酵させてつくるため、発酵に必要な糖質をより多く含むトウモロコシの品種改良が進められています。

中国:精力的に進められる遺伝子組み換えイネの研究

中国は早くからバイオテクノロジーの農業分野への活用に着目し、1980年代には遺伝子組み換え作物の調査を開始しました。現在、遺伝子組み換え技術のより広い活用をめざして、積極的に取り組みが進められているところです。特に遺伝子組み換えイネについては、2002年と2003年に予備的にほ場での試験を行ったところ、農薬の使用が80%減り、収穫が増加したという目覚しい結果が得られるなど、その実用化が期待されています。
中国科学院の中国農業政策センター所長のJikun Huang教授らのチームは、遺伝子組み換えイネの栽培による効果を調べるために、中国の8つの農村で農場調査を実施しました。調査を行ったのは、バチルス・チューリンゲンシスの遺伝子を組み込むことにより、ニカメイチュウ(稲作地帯の70%に被害を与える害虫)およびハマキムシに抵抗性を持つXianyou 63と、豆(カウピー)の遺伝子を組み込んだII-Youming 86の2品種で、どちらも害虫抵抗性のイネです。これらを実際に試験栽培した結果、遺伝子組み換えイネでは、農民の62%は農薬散布をいっさい行わず、約90%は、ニカメイチュウに対する農薬散布を行わずに済んだため、農薬使用量を在来品種より80%削減できました。
また、遺伝子組み換えイネ2品種の平均生産量は在来品種より6%高まり、Xianyou 63単独の平均生産量は9%高まったという結果が得られました。

Huang教授は、「遺伝子組み換え作物の導入は、中国農業の振興および食糧安全保障の改善、ならびに農家の所得向上につながる」と語っています。

サイエンス
http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/308/5722/688

また、中国政府では、ハイブリッド種の害虫抵抗性ワタが中国全土で栽培されたとしたら農民は1年につき最高12億ドルの節約することができると見込んでいます。

2006年6月に、中国政府農業部のFarm Produce Quality Safety centerの次長であるLuo Bin氏は「遺伝子組み換えワタを栽培することにより、殺虫剤の5万トンを削減し、168億元(21億米ドル)の経済効果を与える」とその効果についてコメントしました。2008年に温家宝首席は、「食糧問題を解決するためには、ビッグサイエンスに大きく依存しなければならない。それは遺伝子組み換え技術、バイオテクノロジーである」と述べており、今後12年間で35億ドル(購買力平価で120-150億ドル)を遺伝子組み換え作物の研究・開発に投資すると発表しました(ISAAA)。

中国政府ホームページ
http://www.gov.cn/english/2006-06/17/content_313305.htm

カナダ:健康にいい品種の開発に取り組む

ナタネと大豆のいくつかの品種で、遺伝子組み換え技術により、トランス脂肪酸に関係する脂肪酸組成を改善する品種の開発や、フザリウムという菌類に抵抗性を持つ小麦の開発などが進められています。

インド:産官学をあげて活発に研究に取り組む

インドでは20以上の学術機関や研究機関、7つの民間企業が遺伝子組み換え作物に取り組んでいるとインド・バイオテック・コンソーシアム(Biotech Consortium India Ltd.)は報告しており、ワタ、緑豆およびトマトのウイルス抵抗性、イネ真菌病に対する抵抗性およびジャガイモの栄養改善など、活発に研究されています。

フランス:ブドウや樹木、医学的用途まで幅広く研究が進む

試験圃場では、害虫抵抗性だけではなく、医学的用途での改良や干ばつ状態での光合成を改善したトウモロコシ、ウイルス抵抗性を持つブドウ、テンサイ、タバコや、リグニンを改良したポプラ、といった遺伝子組み換え作物の試験栽培も進められています。
(ISAAA)

イラン:イネだけではなく、多くの研究が進行中

イランでは、23ヵ所の研究機関で、140人を超える多くの研究者が複数のバイテク作物を研究しています。2005年には世界で初めて遺伝子組み換えイネが商業栽培されましたが、これは数多くの研究の中の先駆けのひとつにしか過ぎません。今後の開発が期待されます。(ISAAA)

フィリピン:ビタミン強化のイネの開発

フィリピンは2002年にアジアで初めて遺伝子組み換えトウモロコシの商業用栽培を許可するなど、遺伝子組み換え技術を用いた品種改良を積極的に進めています。フィリピンは異常気象などによる深刻な干ばつに見舞われやすく、農耕地の減少問題も抱えているため、政府は干ばつに強く、生産性の安定が可能な農作物の開発を目指して、新しい技術の導入に前向きです。
また、食料不足による問題を解決するためにも遺伝子組み換え技術は期待されており、フィリピンの国際イネ研究所(International Rice Research Institute:IRRI)ではビタミンや鉄分などを強化したイネの研究がすすめられています。たとえば、ビタミンAの前駆物質であるβカロテンを含み、ビタミンA不足の解消につながるコメ「ゴールデンライス」の研究があり、2011年までの商業化を目指しています。フィリピンで開発が進められている高品質で高収量の遺伝子組み換えのコメが実用化されれば、コメの平均収量が1.5倍になり、自給率は95%に上昇するというFAOの試算も出されています。

食品用途のみならず、バイオ燃料の原材料となるココナツの研究なども行われています。